【架空請求がいかにも怪しい文章であるのは合理的理由がある】
2019年5月25日
1.一見不自然な文面の架空請求
高齢者を中心に架空の請求書をはがきで送りつけて折り返しの電話をさせてお金をだまし取る特殊詐欺の猛威はとどまることを知りません。それらの請求は、「訴訟告知センター」「裁判所通知センター」など、実際には存在しない団体の名称で直ちにお金を支払わなければ訴訟が提起されてしまうとして、受領者を心理的に動揺させることを狙っています。現在も、毎日のように架空請求の判定依頼がスカムディテクターに寄せられています。
ところで、このようなはがきによる架空請求は、文面を見てみると、日本語と不自然であったり、文法的に不自然であったりします。言葉遣いからして、裁判所や公的機関が作成した文書としては稚拙にすぎ、すぐに不自然、不合理であることがわかる内容のものがほとんどという特徴があります。
そのため、ネット上では、「なぜこのような怪しいはがきに騙されるのか」「騙される方が悪い」等々の意見が見受けられます。
こんなハガキが来たよ(笑)
— FUNTIME Cafe (@plakan2000) December 4, 2018
コレを送ってる人
相当バカだね(笑)#訴訟最終告知通達センター pic.twitter.com/WPfipKubmO
もうここまで来ると架空請求に騙される方が悪いと思うw テレビやラジオやネットで何年も前から取り上げられてるのに。バカの極みだな。
— アトース (@show28mac) June 12, 2015
法的手続きっていつもこの手の架空請求ワードとして出るけど、いい加減使い古されてて騙される方がむしろアホとしか。
— ナルメアにお世話されるペリー (@don_peri) October 17, 2017
確かに多くの架空請求をみてみますと、裁判所では使われない用語が使われていたり、日本語としておかしい言葉遣いすら見受けられます。そのため、このような文章で架空請求を送付してくる詐欺業者は馬鹿であるとか詐欺が下手であるなど嘲笑的な意見がネット上に散見され、その中には被害者の側にも落ち度があるというような論調のものもあります。
しかし、架空請求の文面がこのような稚拙な日本語であることには合理的な理由があると考えるべきです。架空請求業者は、書こうと思えばもっとましな日本語の文章をかけるのにもかかわらず、違和感のある日本語の使い方をすることで、あえて「怪しい」文章にして送付しているのです。
2.わざと稚拙な文章にする理由
結論から言えば、架空請求業者はわざと稚拙な日本語の文章で請求をすることで騙されやすい被害者を選別しています。
このような事情は詐欺業者の側から考えれば容易に推察できることです。
例えば、詐欺業者が、裁判所から送付される公的な書面の文体を忠実に再現した請求書を作成したとしましょう。現在は、インターネットで裁判所を含む公的機関の作成した文章もたくさん出回っていますから、はっきりいって、架空請求業者が裁判所や公的機関の書面を入手してこの文体を忠実に真似することは簡単であると思います。
それなのになぜあえて稚拙な文章にするのでしょうか?
仮に、架空請求業者が、そのような公的文書の言い回しを真似て、きちんとした日本語の言い回しで作成した架空請求はがきを送信したとしましょう。
そうすると、どんな事が起こるでしょうか。
受け取った人々ははがきを受け取ったとしても、一見して架空請求であるとはわかりません。そこで、はがきを受け取った人の多くが架空請求はがきに記載された電話番号に電話をかけてしまうことになるでしょう。上記のような稚拙な日本語の文章とは異なりますので、おそらく、非常に多くの人が裁判所からの正当な文書と誤解して、架空請求業者に折り返しの電話をすることになるでしょう。
問題は、この折り返しの電話の応対に要する人数です。
みなさん、自分が架空請求業者の立場になって考えてみてください。自分が架空請求業者の立場で架空請求ハガキを大量に送付した場合に、送付した全てのハガキにレスポンスを求めるでしょうか。
「そりゃ多い方がいいにきまっている」と考えた方、本当にそうですか?
例えば、架空請求ハガキを1万通送付したとしましょう。そのはがきに反応した1万人の人から折り返しの電話がかかってきたとします。そうすると、架空請求業者はこの一万人に対して電話で応対して架空請求の内容を信じさせるように電話で誘導しなければなりません。一万人ですよ?このような数の電話に応対することが莫大な時間とコストを要することはすぐに想像できると思います。
そして、最も重要なポイントは、このように電話をかけてくる人たちは、平均以上の判断能力を持っている人が相当の割合で含まれているということです。というのは、送付したハガキの偽装のレベルが高ければ高いほど、折返しの電話をかけてくる人たちの平均的な判断能力レベルも高くなるはずだからです。これに対して稚拙な文章の架空請求ハガキにレスポンスを返してくる人の判断能力は総じて低いと言えます。このような人たちのほうが簡単に騙せることは言うまでもありません。
2.架空請求業者は効率性を追求している
架空請求という詐欺行為で騙してお金を取るのは並大抵のことではありませんので、架空請求業者とすれば、送付した架空請求ハガキのコストにみあった被害者としかやりとりをしたくないはずです。電話がかかってきたとしても、肝心の詐欺に引っかからないのでは本も子もありませんし、時間が無駄になってしまいます。そこで、架空請求業者は、ハガキに書く文章のレベルをあえて低くして、判断能力が低かったり、警戒心のない人たちだけを相手に詐欺をしようとしているとみるべきです。
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